【新譜紹介】『Hate Über Alles / Kreator』常に進化し続けるクリエイターが放つ新たな傑作

Hate Über Alles
アーティスト：Kreator
ジャンル：スラッシュメタル
2022年

ドイツ出身のスラッシュメタル・バンド、クリエイターの15thアルバム。

日本ではデストラクション、ソドムと共に”ジャーマンスラッシュ三羽烏”などと呼ばれ、スラッシュメタル黎明期から活躍し、ドイツのヘヴィメタルシーンを牽引するバンドの一つであるクリエイター。そんなベテランバンドの彼らですが、前身バンドであるトーメンター (Tormentor) 結成から考えると実に40年という月日は感じさせない、非常にパワフルで挑戦的な傑作を引っさげてきてくれました。

初期の猪突猛進型スラッシュメタルに、90年代に傾倒していたゴシックメタル的なグルーヴを取り入れ、叙情性、構成美を手に入れた彼ら。11thアルバム「Violent Revolution」以降それらの要素をアップデート、ブラッシュアップし続け、常に最高傑作を更新し続けてきました。そして本作「Hate Über Alles（ヘイト・ユーバー・アレス）」。終始アグレッシブで攻撃的なサウンドを展開しつつ、持ち前のメロディアスさ、湿っぽさ、ヘヴィさを高次元でまとめ上げ、文句なしの傑作となっています。

近年の彼らのアルバムではおなじみの流れですが、嵐の前の静けさというような幻想的なインスト曲に始まり、一気にアグレッション全開で爆発する（2）「Hate Über Alles」。つんざくようなミレの絶叫を皮切りに突進力のあるリフで気持ちよく突き進み、これぞクリエイター！というブリッジを聴かせてくれるキラーチューンです。（5）「Strongest Of The Strong」は重厚感あふれるサウンドと適度なキャッチーさがこれまたクリエイターらしい力強い一曲。本作の中でとりわけ印象的なのは（8）「Midnight Sun」でしょうか。不穏なイントロから始まり攻撃的に展開していく中で、突如として女性ヴォーカルの歌声が効果的に響きます。ドイツの女性シンガー、ソフィア・ポルタネットの浮遊感のある歌声はミレとは対照的な歌唱ですがしっかりとハマっており、これまでには無かった新境地を体感できます。

アグレッションに満ち溢れたスラッシュメタルをしっかりと根底に置きながらも、自らを”音楽オタク”と称するミレ・ペトロッツァの、決してヘヴィメタルだけに留まらないありとあらゆる音楽的アイディアを取り入れ、さらに、バンドのこれまでの軌跡の中で培ってきた経験を余すことなく生かすセンスと貪欲さ。常に進化し続ける彼らだからこそ作り得た文句なしの名盤を、是非とも体感してみて下さい。